猫の額より尚狭い

適当に書き散らしていけたらいいと思います

世界一面白い漫画ゴールデンカムイの話をさせてくれ(その1)

この世界には星の数ほどの漫画がある。

その中で最も面白い漫画を知っているだろうか。

そう、週刊ヤングジャンプで連載されている和風闇鍋ウエスタン『ゴールデンカムイ』である(個人の感想です)。

 

その精緻な構成力、魅力的なキャラクター、圧倒的な画力、入念な取材に裏打ちされた正確な風俗描写、抱腹絶倒のギャグ、どれをとっても一級品以上。後世に漫画の教科書として受け継がれていくことがほぼ確定している大名作である。我々は野田サトルという稀代の天才と同じ時代に生まれ落ちたことを感謝しなくてはならない。そしてこの『ゴールデンカムイ』という伝説の終わりをこの目で見届けられることにも。

 

そんな歴史に残る超名作『ゴールデンカムイ』はなんと現在前代未聞の全話無料開放中である。今まで名前しか知らなかったが、この機会に初めて読んだと言う人も少なくないだろう。もしまだ読んでないと言う方がいたら、あと1か月ほど(8月23日現在)で無料キャンペーンが終了してしまうので急いでもらいたい。そして共に見届けてほしい。漫画の歴史が変わる瞬間を。

 

さて、前置きはこれくらいにしてそろそろ本題のゴールデンカムイ語りに入っていきたい。

一般的にはラッコ鍋とかウコチャヌプコロとかのエピソードが良く知られているが、ゴールデンカムイという非常に多面的な魅力を持つ漫画をそれだけでわかった気になるのは惜しい。もちろん本作のギャグ描写が秀逸なことは疑いようもないし、ギャグだけでも覇権を取れるポテンシャルを秘めていると思う。

だがやはりゴールデンカムイの真骨頂は、アイヌの伝承や雄大な自然の営みと魅力的なキャラクターが織り成す人間ドラマが交錯した瞬間だと私は思う。

 

杉本とアシリパ大雪山の麓で鹿の皮に包まれながら語り合うシーンはまさにこの作品の“核心”であり、戦場に心を置いてきたままの者の悲哀や魂の触れあいによる救済が描かれた名シーンである。

 

まあ、日ロ国境線での尾形VSヴァシリの狙撃手同士の死闘は本作のベストバウトの1つであり、ウイルタ民族の棺を囮の囮にした頭脳戦には心底痺れた。その土地の風土や文化を単なる部隊設定で終わらせず本筋にゴリゴリに絡めていく野田先生の手腕には脱帽するしかない。

 

そういった意味で私が好きなエピソードが、単行本11巻に描かれた稲妻強盗と蝮のお銀編である。このすぐ後に例の姉畑支遁が登場するので少し影は薄いが、個人的にはこの一連のエピソードこそ『ゴールデンカムイ』の魅力が濃縮されていると思う。

 

凶悪な強盗夫婦「稲妻強盗」こと坂本慶一郎とその妻のお銀。凶悪な2人がボニーとクライドさながら暴れまわる様は痛快でもあり恐ろしくもあり。(ちなみに2人のモデルは実在するようですが実際には出会ってないらしい。本当に出会ってたらヤバすぎる)

刺青人皮を狙う2人と第七師団との対決がこの巻のメインなのだが、その合間合間に挟まる尾形の過去編や杉本一行と巨大蛇との遭遇のエピソードが本筋をより引き立てる構成となっている。

 

アシリパの語るウエペケレ(民話)があまりにもこのエピソードにマッチしすぎていてもしや野田先生の創作か?と疑ったほど。どんなに苦しくても愛する人と一緒にいることを選んで地に堕ちた蛇と稲妻、ゴールデンカムイの最推しcpの1つです。

入り組んだ油問屋の構造を生かした立体的な立ち回りも非常に良い。どうやらこの建物は実物があるようなのでいつか実際に見に行きたいところ。

 

そして何よりこのエピソードはオチが素晴らしいんだよな…。愛する慶一郎と一緒に死ぬことを選んだお銀。大事そうにおぶっていたその背負い袋の中身は、刺青人皮ではなく2人の子供だった。

稲妻と蝮は凶悪な犯罪者だったが、愛情深い親でもあった。そして子供を保護した鶴見中尉は、その子をアシリパの祖母に託す。アシリパのおばあちゃんが歌う子守唄でこのエピソードは幕を閉じるのだが、そのシーンに尾形が描かれているというのも何かを予感させられる。

親の愛情を受けられずに大人になった尾形と、凶悪な親の子供でありながら愛情を注がれて育っていく赤ん坊との対比がね…もう…(語彙力低下)

一見無関係かと思った尾形の過去がこういう形で結末に結びつくのか!?というカタルシスが本当に素晴らしい。まさに計算しつくされた構成と言っていいだろう。

 

このほかにも最高のエピソードは数えきれないほどあるのだが、とりあえずそれは次回のゴールデンカムイ語りに回すことにする。次回はゴールデンカムイの子の宗教画がすごい!!選手権とかギャグとシリアスの温度差でグッピー死ぬわグランプリなどを予定しているのでぜひ楽しみにしていてほしい。