猫の額より尚狭い

適当に書き散らしていけたらいいと思います

マイリトルゴート面白かったねというオタクの呟き

 

マイリトルゴート面白かったです。

見てない方はTwitterのリンクから飛んで見てください(ちょっと新規登録がめんどくさいです)

 

正直暴力描写とかかなりあるので人を選ぶ作品ではありますが、刺さる人には刺さります。私は結構刺さりました。

なんといってもこの作品、血と臓物をスラム街のドブに溜まってる水で煮詰めたのかと思うくらいの地獄っぷりなんですけど後味がなぜかやたら爽やかなんですよね。

それというのも里見監督の構成がめちゃくちゃ上手くて、何回もいい意味で期待を裏切ってくれるんです(裏切られた先の着地点がまた地獄なわけですが)。

観客の感情のコントロールが巧みなので、目を覆いたくなる光景にも関わらず引き込まれて目が離せなくなっちゃうんですよね。

 

ここからはネタバレになりますが、簡単に展開を説明すると、

 

まず画面に映るのが、オオカミの腹の中から次々と出てくる溶けかけの仔ヤギたち。しかも1匹はもはや原型のない状態で腹の中に取り残されたまま……

そんなショッキングな出だしの後、お母さんヤギが1人の子供を連れて家に帰ってきます。

 

ヤギのフードを被せられてはいるけれど、この子はどう見ても人間の子供。

取り残されたままの”もう1匹”の代わりに、この子はヤギたちのお家へ連れてこられたというわけです。

この時点でもうだいぶ異常さがひしひしと伝わってきますが……

お母さんヤギの話し方が「どこにでもいる普通の母親の声」って感じなのがまたいい味だしてますね。もう完全にこの子を自分の子だと認識してる。

そしてお母さんが去った後、現れる6匹の仔ヤギたち。1匹を除いて皆オオカミの胃の中で溶かされたせいで、ふわふわの毛は抜け落ち肉が剥き出しに……一見すると完全にクリーチャーと化してます。

普通だったらこの後、仔ヤギたちからどうやって逃げ出すかという話になります。でも、この作品はそれだけで終わらない。

 

面倒なので細部は省略しますが、いろいろあって人間の子供と仔ヤギたちは心を通わせます。

照明も恐ろしさを強調する赤っぽい色から、月の光が差し込んでいるかのような優しい色に変わり、仔ヤギたちの不気味さではなく哀れさや痛々しさを表現します。

自分の被っていたフードを、最も後遺症の酷い仔ヤギに被せてあげる子供。

そこで一瞬だけ映る、子供の痣だらけの腕。

あれ?この子もしかして……と考える暇もなく、いきなりオオカミ襲来イベントが始まります。

慌てて戸棚や額縁(?)や瓶の中(⁉)に隠れる仔ヤギたち。ここ、羊毛フェルトならではの表現で面白いと思いました。

 

隠れる暇もなく、無慈悲に開く扉。

ここで観客の緊迫感もクライマックスに達します。

 

……しかし、入ってきたのはオオカミではなく、人間の大人の男性でした。

どうやら、迷子になった子供を迎えに来たようです。

緊張から解放されて、観客もほっとひと安心……

 

……あれ?そういえば……

 

少し前に何か不穏なものをみたような……

 

そこで観客は、今までの地獄がほんの入り口でしかなかったことに気づくわけです。

 

 

この後の展開はちょっとここでは言えないので言及はしないでおきますが、とにかく観客に不快感を催させる描写が上手いこと上手いこと。

羊毛フェルトでここまで人間に嫌悪感を抱かせるものが作れるんだ!!ってちょっと感動したくらいです。

 

確かにね……オオカミってそういう用法でも使われるよね……うん……

あと最後の最後で半ケツが出てたのも最悪過ぎて笑っちゃった。もう比喩表現とかじゃなく”それ”しかないじゃん。

 

まあなんやかんやでハッピーエンドで、子供は仔ヤギたちと楽しく暮らしていくことになるのですが……最後が不穏過ぎてまったくめでたしめでたしという気になれないんだよなあ……

 

そんなわけでとにかく闇が深い。深すぎる作品です。

でも子供の幸せとは何かとか、見た目だけで怖がってはいけないとか、悪い大人はそれとわかる見た目をしていないので気をつけましょうとか、考えさせられる作品でもあります。

お母さんヤギがやったことは完全な誘拐ですが、結果的に子供にとってはその方が良かったのかもしれません。もちろん、罪を償う償わないは別の問題として。

でもまあ個人的に、愚かな人間はオオカミの胃の中で半死半生になるまで溶かした後、穴という穴に石を詰め込んで水に沈めてもまだ足りないくらいだと思ってるのでそちらの件については全く無罪ですが!!

 

そんなわけでモルカーの監督だからということでマイリトルゴートが気になってる皆さん、見て損はないですよ。

モルカーみたいなの期待して見に行くと生きて返ってこれないかもしれませんが。

 

とりあえず言いたいことはこんな感じです。

長々と読んでくださりありがとうございました。